今回の役員改選で、諏訪前会長の後任として会長をお引き受けすることになりました。歴代会長の高橋真弓さん、北条篤史さん、そして諏訪哲夫さんの業績や知名度には遠く及びませんが、これまでの活動を引き継ぎつつ、会の発展のために尽力する所存でございます。
当会は1953年に創設され、本年で73周年を迎えます。以来、会誌「駿河の昆虫」は、驚くことに体裁をほとんど変えることなく、年4回の発行を綿々と続けてまいりました。また、会報である「ちゃっきりむし」も223号を数えます。それ以外の活動も含め、当会は静岡県の昆虫相や生態の解明に大きく貢献してきました。それらもひとえに今まで当会の運営に携わった方々の多大なる努力があったからと思います。今後も静岡県の昆虫に関する知見を深めたり、昆虫の保全に果たす役割として当会への期待は高いものと考えます。
当会の会員数は最も多かったときより減少しておりますが、近年は、会員の高齢化が進みつつも、230人前後を維持しております。最近の入会者の傾向として、昆虫マニアというよりも自然に興味のある方や就学中の若い方が目立ちます。今後は、このような方々にも満足いただける活動を進めることで、会の発展や会員層の広がりが期待できます。そのため、会員諸氏に新たな企画や活動に関し、これまで以上のご意見をいただくとともに、ご協力をお願いしたいと思っております。
2025年2月
2025 年 5 月 15 日に静岡市中島屋グランドホテルで開催された、故高橋真弓さんのお別れの会に参加しました。高橋さんの業績については、ちゃっきりむしを読む方には周知の事実なのであえて書きませんが、個人的にはそして蝶研究をされる方は、高橋さんが著者の一人として参加された原色日本蝶類生態図鑑 I-IV(保育社)をあげる方が多いと思いことでしょう。「お別れ会」には、80 名近くの故人を偲ぶ方が参加されました。特に高橋さんと関係の深かった同世代の方の想い出話や、海外採集に同行された方の高橋さんのエピソードは、非常に興味深く、皆静かに耳を傾けていました。祭壇中央のご遺影と供花のそばに、映し出されていたビデオプロジェクタには終始、高橋さんの若い頃からのお姿や調査風景の画像が流されていました。そして高橋さんの使われていた昆虫関係の用品用具などの形見分けも行われました。
お別れの会の終了後、チャーターされたバスでふじのくに地球環境史ミュージアムに移動し、現在開催されている企画展「蝶聖高橋真弓氏を偲んで」に多くの参加者が見学されました。展示には高橋さんの足跡がわかるよう、次のような展示がされています。若い頃からの写真や、手書きの調査記録ノート、静岡昆虫同好会の始まりから現在まで、数々の論文と標本、高橋さんが訪ねた海外各国の調査地、高橋真弓「語録」、高橋さんが実際に採集に使われていた昆虫採集用具(ネットと三角ケース)、毎年出されていた手書き彩色の年賀状、普段の生活の様子(好きな食べ物/嫌いな食べ物・ピアノ演奏時の楽譜など)、近年トレードマークだったベレー帽(昔のトレードマークだった下駄は南米調査の帰りにパナマ運河に捨ててきたということで、写真のみ展示)、ラベル作成のためのタイプライター(ラベルはほとんどが手書きであるが、海外採集品は同じデータが多いためやむを得ずタイプライターを使い、パソコンは使わなかった)、一眼レフカメラなど。
企画展を一回りした後は、ミュージアムのバックヤードに保管されている高橋真弓コレクション(ドイツ箱約 300 箱に管理番号が付けられ、整然と並んでいる)を閲覧しました。整理中の標本やどのように整理収蔵されているかの説明をミュージアムの方が参加者に詳しく説明されていました。
その後、図書室も閲覧することができ、司書の方から高橋さんが 1951 年にご自身で作られた「静岡縣蝶類分布総目録 I」の現物を見せていただくことができました。この資料は発行部数も少なく、非常に価値の高いものだということでした。図書室は昆虫関係の資料も充実しており、専門の司書の方が順次整理し閲覧できるように登録されているとのことでした。ミュージアムの滞在時間はおよそ 2 時間弱でしたが、たいへん貴重な資料を見ることができました。