1 鱗翅類交尾器観察方法 (2012.4.2)
雄交尾器標本の簡易作製方法
@成虫を粘着板からはがすには,キシレンを使用して粘着剤を溶かすと良い。はずした成虫には粘着剤がまだ付着しているので,しばらくの間(5分間程度)キシレンに漬けておく。
A成虫の腹部はピンセットを用いてはずす。
Bはずした腹部を水酸化カリウムの10%溶液に着け,40℃の恒温器内で1晩(8-12時間程度)寝かしておく。冬期以外は,恒温器内でなく室温で1晩寝かせるだけでもよい。腹部ははじめ水酸化カリウム溶液をはじくが,しばらく置いておくとなじんでくる。
Cこの腹部を70-80%エタノール溶液中に入れ,実体顕微鏡下でピンセットあるいは柄付き針などで押さえながら,面相筆などの細くて軟らかい筆を用いて鱗粉・筋肉等を大まかに除去する。筆先で腹部や交尾器をたたくようにすると鱗粉がはがれる。このとき,粘着剤がまだ付着している場合は,腹部をキシレンに漬けるとすぐに粘着剤は溶ける。
D次ぎに腹部ごと,酢酸の原液に浸け,筆先で腹部や交尾器をたたくようにしながら鱗粉・筋肉等を除去する。この後,再度エタノール溶液に漬け,酢酸を除く。酢酸は刺激物であるので取り扱うときは換気をよく行うようにして,注意して欲しい。
Eエタノールに漬けたままの状態で交尾器の形態を検鏡観察する。あるいは,次の保存方法の@で述べるようにホールスライドグラスのグリセリン原液内で検鏡しても良い。
雄交尾器の簡易保存方法
@ホールスライドグラスのホール部分にグリセリンの原液を垂らして,その中にきれいにした交尾器をバルバ(va)が左右に開くようにおき,包埋する。バルバが左右に開きにくい場合は,横向きのままでもよい。
Aホールグラスの上にカバーグラスをかける。このとき,カバーグラスを動かないように固定するため,マニュキアでカバーグラスの端をスライドグラスと接着させる(2箇所ほどで良い)。カバーグラスを固定したかどうかの確認には,赤色などのマニュキアを使用することをお薦めする。
Bスライドグラスにマジックインキで必要なデータを書くか,あるいはデータを書いた小さな紙を糊付けしておく。
C交尾器はグリセリンに包埋されているため,長期間保存できる。カバーグラスは簡単にはずれるため,その後も詳しい観察ができる。(那須)
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2 微小昆虫の乾燥方法 (2012.5.13)
寄生蜂やアブラムシなどをそのまま乾燥させると体が潰れてしまいます.潰さないで乾燥させる方法はいくつかありますが,安価に出来る方法として大英博物館の「Universal Chalcidoidea Database」に記載されている方法を紹介します.まず,アルコールで脱水します.最初は50%,次に70%,最後に99%のアルコールにそれぞれ30分間漬けて徐々に脱水します.次にアルコールをHMDS(ヘキサメチルジシラザン)に置き換えます.最初に30分間漬けて,次に時計皿に入れたHMDSに移し,屋外でHMDSを飛ばせば出来上がりです. 大英博物館のホームページはこちら (T)
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